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bin ジャムと珈琲、あるいはその他。のコーヒー「黒パン(カンパーニュ)」

カンパーニュや黒パンという名の自家焙煎コーヒー。西宮市苦楽園口「bin ジャムと珈琲、あるいはその他。」が閉店

      2015/11/18

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苦楽園口のカフェ「bin ジャムと珈琲、あるいはその他。」が閉店

苦楽園口のカフェ「bin ジャムと珈琲、あるいはその他。」が閉店

2015年7月29日、兵庫県西宮市苦楽園口の焙煎所と喫茶店「bin ジャムと珈琲、あるいはその他。」が閉店した。独特な店名のカフェであるが、静かな佇まいと確かな味は多くのコーヒーファンを魅了し、また、自家製ジャムは神戸のパン通を虜にした。2010年9月にオープンし、5年間の営業。倉谷真矢店主はブログとフェイスブックページで感謝の言葉を述べているが、同時に「どうもすみませんでした」と陳謝している。

自家焙煎される珈琲豆の香りと音が轟く静かなカフェ

「bin ジャムと珈琲、あるいはその他。」は阪急甲陽線苦楽園口から徒歩5分程度のところにお店を構えていた。とても静かな、というかひっそりとした佇まいで、お店を目指していても気づかず素通りしてしまいそうになる。そういう雰囲気を意識的に出していたように思う。というのは、筆者が伺ったときも、お客さんは数組居たものの、ほとんどの人が話すことなく、木のテーブルを囲んで、ゆっくりとコーヒーやケーキを味わっていた。レトロな店内には、古き良きアンティークなども装飾・販売していて、それを見るのも楽しみのひとつだった人も多いはず。お店の一角で焙煎される豆の香りと音が、コーヒーをより身近に、そして美味しく感じさせたことが記憶に残っている。

パンを愛する人のためのコーヒー「カンパーニュ」や「黒パン」、そして「カヌレ」

コーヒーの名前が実にユニークというか、パンが好きなら愛着を持ってしまうものであった。オーガニックの中深煎り珈琲は「カンパーニュ(Campagne)」、少し深煎りの甘苦い珈琲は「カヌレ(Canelé)」と命名(筆者が寄ったときは「黒パン」だった)。夙川・苦楽園口辺りはおいしいベーカリーが多い。アミーンズオーヴン、リョウイチヤマウチ、ラバゲットドパリヨシカワ、コンセントマーケット、トリコ、ブーランジェリーミヤナガ、フリアンド…。パン屋さんをめぐって、一息つきにbinで休憩された方もいたのではなかろうか。

bin ジャムと珈琲、あるいはその他。のコーヒー「黒パン(カンパーニュ)」は陶器も魅力のひとつ

bin ジャムと珈琲、あるいはその他。のコーヒー「黒パン(カンパーニュ)」は陶器も魅力のひとつ

自家製ジャム「グラニースミス」はPAINLOTのイベントでも好評だった

店名にも入っているが、ホームメイドのジャムも販売していた。筆者はグラニースミス(青りんご)を購入。買った日から数日後に京都円町の食堂スーフルにて「PAINLOT × souffle “In The City!! Comparing The Jam!!”」という、数種類のジャムを味わうイベントを開催した。そのときに、このグラニースミスを出させて頂いたのだが、倉谷真矢店主にジャムに対する想いをメールで聞いたことがあった。

基本的には、そのまま食べれるような、甘すぎないジャムにしたいと考えています。

そして、素材をただ煮る、という、できるだけシンプルな物にしたく、味や硬さをほとんどコントロールしないようにしております。

甘いものは甘く、酸っぱいものは酸っぱく、ゆるいものはゆるく、味だけでなくペクチン量なども含め、素材そのままで良いではないかと思っています。(たまには、それを引き出すようなスパイスなども使いますが)

あとは、加工用や、規格にあわず廃棄されてしまうようなB品などを使うことが基本です。捨てなきゃならない、腐らせてしまう。ならば瓶詰めに。というのが保存食の原点だと思うので。

グラニースミスに関しては、やはり酸っぱさが魅力です。個人的にジャムの好きなところは、甘さよりも酸っぱさにあります。赤なら紅玉、青ならグラニースミスがジャムには最適だと思います。

ジャムのイベントでは、甘いものが多い中で、フレッシュな酸っぱさが参加者に好評だったことを覚えている。筆者はカンパーニュやライ麦パンなどの少し酸っぱめのパンに合わせるのが好きだった。この季節だったらかき氷にもよいのではないかと思う。コーヒーを飲んで、ジャムを買って、自宅で楽しむ。そんな光景は無くなってしまったと思うと少し寂しくも感じる。

bin ジャムと珈琲、あるいはその他。のグラニースミス

bin ジャムと珈琲、あるいはその他。のグラニースミス

「明日のお豆腐いかがでしょうか?」の書き込みは、もう見られないかもしれない

bin ジャムと珈琲、あるいはその他。
閉店しました。
5年間、ありがとうございました。
と、感謝を述べるのもしっくりこないのは
どういうわけか。

感謝より陳謝なのかもなと。
本当に、5年間、どうもすいませんでした。

とブログで言葉を述べているが、倉谷店主の人柄がにじみ出ているように思う。「暖かい」というより無骨で、そして個性的。しかし、物腰の柔らかさが染み出てくる文ではないかと思える。もっと通えばよかったと感じるが、コーヒーやジャムを味わう機会に恵まれ、さらにはPAINLOTのイベントに協力して頂き、感謝の気持ちでいっぱいになる。Twitterで「明日のお豆腐いかがでしょうか?」という書き込みに、「お願いします!」と返信できなかったことだけが悔やまれる(とうふ屋六兵衛の移動販売注文をお店で承っていた)。長いようで短い、短いようで長い5年間、本当にありがとうございました。

2016年の春、和歌山でリスタート

【追記】bin ジャムと珈琲、あるいはその他。のウェブサイトは消滅してしまったが、フェイスブックページによると、2016年春、和歌山で再出発すると書かれている。ファンは期待して待とう。

関連リンク

 - パンのニュース, 閉店